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夏と夏の合間

咲-Saki-

愛宕洋榎+江口セーラ

日文同人

 

******

 

 

夏と夏の合間

 

 

  「あっづーー」

  「なんや、もうへとへとかいな、まだ帰りがあるで。」

 

  凄い勢いで売店の外にあるベンチに腰を掛けるセーラを見て、情けないなと言わんばかりに、洋榎が口を開く。

 

  「買い物に付き合っとる言うのに、つれないな」とセーラが言い出したら、「頼んとらん」と洋榎がわざとらしく反論する。二年の夏が終わって、すぐさま秋季大会があると言うのに、微妙なタイミングでの共同合宿と言わざるをえなかった。そのためか、レギュラー同士での対戦もそれなりに控えており、双方の監督や選手の仲の良さを考えれば、バカンスのような短い合間にも取れた。今日も、軽く打った後、誰から始めたか、王様ゲームをやることになってしまった。そこで洋榎は不幸にもリクエストされ、皆の分の飲み物を買ってこいと、炎天下での使いパシリになってしまった。

  「ひとりで運ぶんならさすがに辛いやと思って、俺なりの配慮やったのに。」

  「そらどうも…ん?」

  買ったばかりの飲料缶をとりあえずベンチに並べたら、何かを探してるみたく、洋榎がポケットをもさぐった。どうやら欲しいもんが見つけられなくてため息を一つ、そしたらなんと、手を合わせてセーラに頼んできた。

  「なん?」

  「アイス食いたい!」

  「はん?」

  何かなんだかさっぱり分かってないか、セーラは思わず奇声をあげてしまう。

  「勝手に買えばええやろ。それともなん、食べられへん理由でもあったんか?生理とか?」

  「真夏に生理なんぞ来させてたまるかいな!アイスが食べられなくなるやろう!」

  「そらそうやけど…来んな言うて来ないほど楽なもんや…ってそこやない!」

  「お、ええ具合で突っ込んできおるの。」

 

  洋榎が楽しそうな顔をしてるから、からかってんやろとセーラが勝手に思い込む。だが真剣に考えてみれば、こいつは元々そういうテンションで、このやりとりもそんなにわるい気はしなかったから、まあ許せた。

 

  「んで?」

  「飲み物を買うために、お金を全部…」

  「最初からそう言っとけ…」

 

  文句にもならない文句を口走って、ポケットからお金を出して洋榎に渡す、よっぽと楽しかったか、こんな暑い中になんとステップしながら売店に戻ってやがった。これもまた見るだけでも人をなまけさせる。もう全身という全身から力が抜けちなうような…

 

  「ん。」

 

  目を瞑ってやり過ごそうとした矢先だった、洋榎がアイスと小銭を持って戻ってきた。

 

  「…ポプシクル。」

  「やっぱな、二人やとこれがええな。」

 

  自分の言い分に納得してるご様子でなにより…っと、そういえば。みどり色のアイスキャンデーを洋榎から受け取り、昔もこんなことあったっけってつい思っちまう。そうだ、確か一年の夏の頃…そん時は東京で、奢ってもらってるのはこっちの方で…

 

  「東京は大阪より物価高いいうのに、ポプシクルだけ違うっちゅ不思議。」

  「…物価っちゅよりインフレの問題やろ。もうあれから一年やで。」

  「ハハ、そっか。」

 

  洋榎は立ったまま、合宿場への小道を眺めながら、楽しげに笑った。

 

  「せやけど、そいじゃうちがお得やん、今の方が三十円高かったんやしな、ポプシクル。」

  「なんや、気にしてんのか?ほいじゃ次会った時また返してくれや。」

  「そうさせてもらうー。おいっしょ。」

 

  洋榎はまだ飲料缶に占拠されていないセーラの横に腰を掛けた。蝉の声がまだ煩いので、二人揃ってのだんまりは不思議なほどに心地良かった。

 

  「まだ内緒なことなんやけど…今日会った、園城寺怜って子がいるやろ。」

  「お、ずっとおたくの部長さんと一緒におった…」

  「そいつがな、今度はうちのエースになるんや。」

  「ふん…」

 

  ぼうーとアイスをかじりながら、少しの合間の後、洋榎はやや真剣な顔でセーラに振り向く。

 

  「それ、うちが聞いてええ話なん?」

  「内緒ゆうても部の中だけな。もうすぐ秋季大会やし、この合宿が終わったらすぐ発表されると思うんわ。」

  「ふん——」

  「でな、気になって監督に訊いてみたとこ…多分次の試合から、中堅でやることになるわ。」

 

  さっきまで飄々とした洋榎は、その言葉にふっと我を帰った。

 

  「っちゅことは…」

  「っハ!次からはよろしくな。」

 

  さっきの重い話題が嘘のように、セーラがでっかい笑顔でそう言い出した。

 

  「なんやめっちゃええ事やないか!」

  「ちょ、おま、人の気も知らんで…まあ確かにええことやな、うちと姫松ではオーダーが違うんやし、このままあんたと直の対戦もできんまま卒業すんかと思ったわ。」

  「秋季大会で同じブロックにならへんかな——」

  「なんやそれ、自分で自分の首絞めてんか?」

 

  微妙などこにせっかちなんやなこいつ…苦笑いに微かな楽しさが浸って、それが輪となって広がってゆく。

 

  「逆ブロックの方がええやろ。」

  だからかな…こんなことを言い出すのも、なんかすげえ楽しくなってきた。強豪を尽く蹴散らし、期待とドキドキで胸いっぱいになって、そいで最後はあの舞台で…あの舞台で、自分が一番認めていた相手と戦う。

  「おまえとは…最高のステージで打ちたいんや。」

 

 

  短期合宿は思ったよりも早く終わってしまった。合宿場は姫松寄りで出発もそう急ぐことはないので、千里山のメンバーを出向く車が朝早くそこに到着した。

  見送りはいいって先日の夜に話したんだが、結局姫松のスタメンは全員揃って駐車場にいた。アクビをしながら車に向かったら、洋榎もまたねむそうな顔をしていて、それがなんか妙に可笑しかった。

  「じゃいってくる。」

  「あ、いってらっしゃいー…って、そうや。」

  「ん?」

 

  軽く挨拶をしたら車に入ろうかと思ったのに、洋榎に呼び止められた。両腕を頭の後ろに組んで、姫松の主将さんは、満足そうに小さく笑ってそう言った。

 

  「三十円…今度の全国ん時返すわ。」

 

  その言葉は、眠気と多少濁っていた鬱憤を綺麗さっぱりなぎ払うほどの力を帯びていた。

 

 

  「——ああ。」

 

 

 

—終わり—

 

 

 

  「そんなんでモチベーションー上がるかいな?」

  「男の子の世界はよう分からんわ。」

  「お姉ちゃんは女の子やけどな…」

  「いや、セーラがて女の子やん|||」

 

  ——みたいの会話が、そのやりとりを眺めている竜華や怜、そして絹恵の間で繰広げられていることを、洋榎とセーラは知らなかった。

 

 

 

—まじで終わった—

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